ハリケーンで露呈したアメリカの真実

記録的な被害を出したハリケーン、カトリーナ。イラクでハイテク兵器を駆使する超大国は、その裏側にある貧困を露呈した。

/ブライアン・コバート

洪水の中に浮かぶ多くの遺体、数日にわたり屋根の上に取り残された人々、紛争地域からの難民を思わせるような避難する人々の列。2005年8月末にアメリカ南部で1300人以上の人々の命を奪い、100万人以上の人々の家を奪ったハリケーン・カトリーナの写真が世界の人々に衝撃を与えた。

被害に遭った人々の中にアフリカ系住民の顔を多く見るのは偶然ではない。最も深刻な被害を受けた都市の一つであるニューオーリンズの人口約444000人のうち68%がアフリカ系住民で、白人は28%である。町の貧困層の多くは洪水の被害に無防備な海面レベルに近い、低い場所に住むアフリカ系住民であった。

また、白人住民は車を所有していたが、アフリカ系住民は公共交通機関に頼る人が多く洪水で交通機関が壊滅した時には、なすすべもなかった。アフリカ系住民は当局からも見捨てられ置き去りにされた。

世界中の目から負傷者や死者の衝撃的な映像を隠すため、ブッシュ政権は被災地を取材するジャーナリスト、報道機関に対して「ゼロ・アクセス・ポリシー」を設けた。それは1990年代の湾岸戦争以降、海外から移送されてきたアメリカ兵の遺体が入った棺の映像を隠すために政府が設けた規制だ。しかし、今回は政権にとって予期しないことが起こった。主流メディアが反撃を試みCNNが報道の自由を規制する「ゼロ・アクセス・ポリシー」を無効とする訴訟を連邦裁判所に起こしたのだ。ブッシュ政権は規制を撤回し、アメリカのメディアは一時的にではあったが大きな勝利を得た。

ジャーナリズムが公正に行われている時、それは国家や支配者たちが隠そうとする差別や貧困、また戦争から幻影を消し去り「むき出しの真実」を突きつけることができる。史上最大級と言われるハリケーン・カトリーナの被害は、その明白な例となった。

アフリカ系住民が取り残され甚大な被害を受けたことが報道されたことにより、アメリカに根強く存在する人種差別、貧困が世界中に知らされた。アメリカが今後どのような道を歩もうとも、世界はもう「アメリカン・ドリーム」を以前と同じように見ることはできない。

ブライアン・コバート
ジャーナリスト。1959年アメリカ、カリフォルニア州生まれ。87年初来日し、UPI特派員、ジャパンタイムスなどで記者として勤務。99年帰国し、04年再来日。現在兵庫県在住。